- 2014.09.30
- コラム
Andy Wada’ s point of view – アンディー和田の視点 No.3
欧米のスポーツ界では良く「Give back to the game.」という言葉が使われます。
「そのスポーツへの恩返し」、次世代の育成の意を込めて現役選手達はファウンデーション(基金)を設定したり ジュニア、大学、下部ツアーなどの競技大会の冠スポンサーとして支援、サポートを続けています。
石川選手は日本ジュニアゴルフ協会(JJGA)の18歳以下対象の「タイガー魔法瓶presents 石川遼カップ ジュニアゴルフ チャンピオンシップ」という冠競技を2009年から続けていますが、昨年9月に日本ゴルフツアー機構(JGTO)の下部組織となるチャレンジツアーで「everyone PROJECT Challenge Golf Tournament ~石川遼プロデュース~」という新設大会を開催。
今年も10月2日から4日までの3日間、栃木県芳賀郡のロイヤルメドウゴルフスタジアムで賞金総額1500万円(優勝270万円)の大会が開かれます。
アメリカのPGAツアー競技転戦中の石川選手に取材するときは通常その週の調子やプレーの振り返り、またはこれからの目標や課題などを尋ねるときがほとんどですが、時々トピックを変えてアメリカのゴルフコース設計やPGAツアー競技委員のコース設定などの話を尋ねるとそれまでとは違った熱い眼差しで長い間に渡り話をしてくれます。
石川選手の「ゴルフ愛」を感じる瞬間です。
「アメリカには おもしろみがあるパー5が多い」
「2オンできない600ヤードのパー5ではなく540ヤードでグリーン周りを面白くしているホールの設定」
「ピンポジションに競技委員会の意図を感じる」
「同じホールだけど ティーの位置とホールロケーションを変えて違うホールのような雰囲気が好き」
・・などこれまで経験してきた大会のコースやセッティングの事を説明してくれます。
昨年から新設したチャレンジ競技に関しては石川選手自らが「選手目線の大会作りにトーナメントプロデューサーとして初めて挑戦します!」という言葉通り選手サイドから実感できる「しっかりと良いパフォーマンスが出せる」ような細かい点の拘り、気配りをしてあげるという思いが感じられました。
私なりに色々なリサーチをしながら どの辺りが石川選手が選手目線で拘りをみせているのか?
他のチャレンジ競技とは異なる点、改善点なのかを調べたところ幾つか面白い点が判明しました。
① 3日間、54ホール競技、賞金総額1500万円。
予選通過は2日目を終えた時点での60位タイまでの選手。(アマチュア用通過の別ルールあり)
今シーズン16試合で形成されているチャレンジ競技で3日間競技は4試合だけ。
他の12試合は2日の36ホール競技。
2日間だと初日のスコアーで予選通過ラインとなる60位タイが決まってしまいます。
運営する費用はかなりかかってしまうでしょうが、やはりツアー競技と同じように36ホール時点で予選カットがあるのがプロ競技のグローバルスタンダード。
ここの拘りは大事でしょう。
② 通常下部のチャレンジ競技ですと参加人数144人(または136人)を4人1組をOUT / INに分けてプレーをさせるというシステムになります。
しかしこれだと全体のプレーが非常に遅くなるのとハーフ終了時にかなり待たなくてはならないので選手はプレーのリズムを維持するのが難しくなります。
石川選手がプロデュースするこの大会は出場人数を120人(昨年は132人)と制限しますが、その分 初日と2日目の予選ラウンドは3人1組、OUT/INスタートを午前と午後に分けて選手がよりスムースにプレーができるような進行を検討されています。
早朝スタートは7時、最終スタートは12時半。
大会に関わる大会運営スタッフ、クラブハウススタッフ、コース管理スタッフなどは連日長丁場で大変な作業ですが それも良いパフォーマンスを出して欲しいという石川選手の「選手目線の大会作り」のモットーが込められています。
昨年同大会紹介のJGTO公式HPには石川選手のメッセージが載っていました。
「アメリカツアーは、日本に比べ、出場選手に対するホスピタリティが充実しています。その中の一つにドリンクの提供があり、18ホールすべてのティグラウンドに冷えたドリンクが用意されているんです。出場選手のコンディション作りをサポートすることも大会として重要な要素と感じたので、この大会でも全ホールでのドリンクを準備させていただきました」
大会コースとなる「ロイヤルメドウゴルフスタジアム」( http://www.royalmeadow.jp/ )は石川選手自らが2011年からコースに何度も足を運びグリーンやバンカー、ティーの位置を改修。
グリーンの芝にも拘りあのオーガスタナショナルと同じペンA2というベント芝に仕上げているということです。
大きく改修したのは全部で8ホール。
アイデアはやはりアメリカで感じたことを取り入れ、グリーンはピンポジションを4つ想定できるようなグリーン形状を考慮。
カップを傾斜の途中に切るような苦肉の策はしたくない。いいショットご褒美、悪いショットは罰が来るような設定にしていきたいなどと説明をしてくれました。
今大会も3日間のピンポジションは石川選手が全て決めているそうです。
パー5に関しては8番はパー4に変更。 12番、16番などは通常のバックティーよりも距離を少し短い設定にして2オンを狙わせるようなセッティングにしているようです。
昨年は7個のイーグルがパー5で記録され、永松宏之選手が16番でアルバトロスを達成するという事がありましたが 今年はどんなドラマが生まれるのか楽しみですね。
12番 パー5 :通常バックティー 575ヤード → トーナメント 547ヤード
16番 パー5 :通常バックティー 579ヤード → トーナメント 545ヤード
8番 パー5 :通常バックティー 503ヤード → パー4設定に変更 トーナメント 472ヤード
★★★★★
下記は昨年の大会終了時、2013年9月22日 石川選手のメッセージでした。
このメッセージから彼がどこまでこの大会を気にかけているのが分かりますね。
チャレンジツアー。
everyone プロジェクト チャレンジゴルフトーナメント。
今回自分にとって初のチャレンジツアーをプロデュースするという経験。
ドタバタした点もあったかと思いますが、このプロジェクトに賛同していただき協力してくださった皆様、ロイヤルメドウの皆様、本当にありがとうございました。
この場を借りてお礼申し上げます。
明日のプロアマ是非楽しんでください。
出場してくださった選手の意見も聞きながら、もっと良い試合、システムにしていければいいなと思っています。
ピン位置は最終日が一番楽だったとの感想もいただきました。悲
でも10アンダーが優勝ですから、正直ドンピシャです。3日間で18アンダーとかいかなくてちょっと安心です。
チャレンジツアーの選手は当然レギュラーツアーを目指しているわけです。
チャレンジツアーとレギュラーツアーで『コースセッティング』があまりに違うようではチャレンジツアーの選手がレギュラーツアーにいったときに、その違いに戸惑いパフォーマンスを発揮できない。。。
自分はむしろレギュラーツアーも全体的にもっと難しくても良いと思いますが、現時点でも既にこれだけセッティングに差があるのでチャレンジツアーの選手がもっと苦しくなってしまいます。
実際自分もアメリカの2部web.comファイルズ出てますが、セッティングは素晴らしいです。
コースの皆様がドヤ顔してますよ。
このセッティングでどこまで伸ばせますか?みたいな感じで。
コースセッティングはそのまま選手のモチベーションを左右するといっても過言ではないでしょう。
つまり!
チャレンジツアーのコースセッティングを難しくすることでそこを勝ち抜いた選手はレギュラーツアーでも通用する。
という形を作っていければ最高かなと。
言うのは簡単ってやつですか。
やりましょうよ、日本のゴルフの将来を担うのはレギュラーツアーだけじゃありませんから。
そういう意味で自分はロイヤルメドウゴルフスタジアムという素晴らしいコースの皆様に感謝していますし、これからもっと良いコースになる伸び代を持ったコースですからこれからが楽しみです。
はあ。熱くなった上に長くなってもうた。
★★★★★
15歳の時に日本ツアー競技で優勝、16歳でプロ転向した石川選手にとって 小学生や中学生時代に一緒に戦っていた選手達がチャレンジツアー競技のチャンスをうまく掴み、レギュラーツアー昇格、将来は世界のトップレベルで一緒に戦い、切磋琢磨していこうというメッセージが込められているんでしょう。
昨年の優勝者、富村真治選手は賞金ランク4位でチャレンジツアーを卒業して昇格。
今年はここまで獲得賞金1000万円を越えて賞金ランク41位(9月末現在) 来期のシード権獲得に向けて好位置につけています。
今年はどんな戦いになるのか楽しみですね。
★★★★★
http://www.everyone-project.jp/about.html
”everyone”
ファンの皆さん、ゴルフに関係する人々、スタッフの皆さん、様々な形で支えていただいているすべての人々があってこその石川遼。
そのことを常に忘れず、ゴルフを通じて恩返しをしていきたい…。
それが 「everyone PRIOJECT」です。
PROJECTの取り組みによりゴルフ界を活性化し、その中で石川遼自身もさらなる高みを目指してチャレンジし続ける。
それにより日本のゴルフ界が発展していくこと。 これこそが唯一の恩返しだと考えています。
アンディー和田 1968年生まれ。 14歳で渡米、南カリフォルニアでゴルフを始めてアリゾナ大学に進学。 卒業後は1991年にプロ転向しアメリカ国内のミニツアーやカナダ・南米・豪州・アジアなど世界25ヶ国でプロの試合を経験。 青木功や中嶋常幸、大町昭義など米ツアーでのキャディーの経験もあり。 2000年からはゴルフチャンネルでトーナメント解説者に転職。 欧州ツアーやLPGAツアー、アメリカ2部ツアーなどどんなツアーにも詳しい解説アナリスト、コメンテーター。 |