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COLUMN

  • 2014.07.23
  • コラム

Andy Wada’ s point of view – アンディー和田の視点

 

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石川遼選手のオフィシャルサイトをご覧頂いているファンの皆様、はじめまして!
2000年からトーナメント解説、ゴルフアナリストという仕事をしているアンディー和田と申します。


この度は縁がありコラムに寄稿することになりました。
石川選手のことはもう色々ご存じだと思いますが、解説者という専門的なアングル・角度で皆様にこれまでとは違った石川選手の話をしていきたいと考えています。
どうかよろしくお願いします。

 


まず今回は私が現場でどのように取材をしているのかを説明したいと思います。

 


石川選手のゴルフは米ツアーデビューの2009年から毎年観察をしています。
他の番記者とは異なり、毎試合、全ラウンドに密着しているわけではありません。
しかし3ー4ヶ月振りに石川選手のプレーを見ると新鮮で前回よりも変わった技術的部分、どのようにレベルアップしようとしているのかが分かります。


アメリカのツアー会場に行くと石川選手の回りにはいつも沢山の報道陣が集まります。
テレビ関係者、新聞記者やゴルフ専門誌の物書きさん、もちろん沢山のカメラマンなど総勢60人になることもあります。
1週間のスケジュールを簡単に説明すると・・・まず大会がスタートする前の練習ラウンドやプロアマ競技終了時にインタビュー、囲み取材があります。
そして連日ラウンド終了後にはインタビューがあります。
その日の調子はどうだったのか? 
プレーの内容、バーディーやボギーの説明や明日に向けての抱負などを尋ねて石川選手が返答してくれます。
またキャディーさんに残り距離や使用クラブを教えてもらいます。
個人的にはコースガイドを確認しながら距離と使用クラブを予想して照らし合わせるように私はしています。

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私の注目ポイントは決してその日のスコアーだけありません。
キーワードはAttention to detail (できるだけ敏感に細かいところを注意して観察する)
選手の表情を確認して狙っていたショットの意図と結果的にボールが止まった場所との相違はどうだったのか?
クラブを打つ直前に変えた時などはキャディーとどのような会話があったのか?
4日間、72ホールプレーをするともちろんミスショットが多く出ますが、そのミスの度合いとパターンはどうなっているのか?
グリーン周りではボールのライやグリップの握り方など細かい部分をチェックするようにしています。


全てのショットを密着で追うことはできませんが、できる限り石川選手の飛行線後方(邪魔にならない5-8メートルぐらい後ろ)に立ちます。
このポジションだといろいろなことを観察できるからです。


①スタンスの向き、目線、肩と肘のラインの確認で出球の狙い
②ダウンスイングでのシャフトアングルの入り方
③実際の出球の方向とボールの曲がり方
④打音
⑤球の高さ
⑥打った後の選手の表情や仕草


皆さんは既にPGAツアーで活躍する石川選手をフォローしていらっしゃるということでもうご存じだと思いますが、アメリカPGAツアーの公式HPには本当に沢山のデータをチェックすることができます( www.pgatour.com )。
各ホールのスコアーはもちろん、ショットリンクというシステムでは毎ショット、ボールがどこに行ったのか? どれぐらいの距離が残っていたのかがインターネット上ワンクリック、 ツークリックで分かります。
しかしインターネットで確認できないのが上記の6つのポイントです。 解説者としてはインターネットでは分からない部分の説明を伝えるのが義務と感じます。
そして自分なりにその理由を考える。 英語での説明になりますが
「How many & What」・・・ つまり いくつであがった や 画面でなにか起きたかを説明するのは実況の仕事。
「How & Why 」・・・ どうやって そして何故?を説明するのが解説者の役割となります。


アメリカPGAツアーフル参戦2年目で最終日の戦い方が前年度よりも落ち着いている感がある石川選手ですが、なんといっても向上したのはボールコントロール(球の操作性)です。
米ツアーデビュー当時は高い球でドロー重視でしたが右からの風が吹いた時に右サイドのピンを狙う事に苦労していました。
現在は高低差のコントロール、左右から吹く風と喧嘩させるようにスピンをかける上級技も身につけ難コースと戦っています。
アイアンショットでは時にボールをしっかりと潰して強い球を打つと時もあれば、ターフをとらずボールだけクリーンに打ちスピン量をコントロールするという技有り職人球を打つこともあります。
石川選手をサッカー選手に例えると「ファンタジスタ」でしょう。
多様バリエーションが本当に豊富で球を自由に操るゴルフを展開しています。
なんといってもミスを怖がらずに攻める姿勢にも自信を感じます。
パーセーンテージの高い守りのゴルフをしていたらPGAツアーでは予選を通過はできるでしょうが、25位-30位しか見えてこないでしょう。
リスクを持って攻めるプレー。
時には大叩きになってします時もあるでしょうが攻める姿勢がないと「62」「63」というスコアーは出ません。


ここで以前独占インタビューに応じてくれた石川選手のコメントをご紹介します。

 

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和田:PGAツアー中でコースが色々自分を教えてくれる、上達させてくれるという話を以前されてましたね。
自信を持って戦える部分、上手くなったっていうのはどのあたりですか?


石川:そうですね一言でいうとやっぱ球を曲げる、球を曲げてピンに寄せるという事が、この2年位で急に出来るようになったかなと思いますね。
中学1年生の頃は、単純にパーを狙うゴルフからバーディーを狙うゴルフに変わりました。
プロになって、こっちに年に何試合か推薦で出させてもらった時から、例えば自分の持ち球というのがドローだったとしたら、ドローボールだけじゃ絶対にだめというか、絶対にフェィドボールじゃなきゃよらないピン、絶対にフェィドボールじゃないとよらないピンなど、逆もありました。
フェイドだけ打ててもだめ。 いきなりドローを求められる、それが前下がりのスライスしやすい状況からドローが求められたり、逆の前上がりからフェイドが求められたり。
マスターズとかもそうだと思うんですけど、まぁ本当にその度になんか、この、出来ない問題を出されて、解けない問題を出されて、答えを出せずに、テスト用紙が返ってきたような感じでした。
そのたびに教科書を見て調べるじゃないですけど、自分でどうやったら打てるんだろ、どうやったら解けるんだろとやっていって、何とか基本の問題は解けたけど、いざコースにいってまた新たな課題が出たり、その応用編が出たりすると難しくなってくるというか、じゃぁ左足上がりから低い球打てますかとか、左足さがりから高い球うてますかとか、っていうのが求められてきて、そのたびにまた帰って練習してっていう感じでその繰り返して、そうですね、今はあの段々できるようになってきているかなと思っています。


和田:それぞれコースの難しさがチャレンジ、挑戦的に要求してくるということでしょうか?


石川:本当にそれ思いますね。
まぁあの、もちろん国土も違ったりその国全体の地形も違ったり気候も違ったり、一概に日本とアメリカのコースを比べるって言うのはなかなか難しい所もありますけど、まぁ、単純に感じたのは、本当に一つのライから4種類5種類のショットを打てる技術がないと勝てないって言うことですかね。
だから、正直日本だったら低いフェィドボール、これひとつ打てるだけで、極めれば勝つことが出来ると思うんですけど、じゃあこっちはどうかって言われたときに、非常に難しいものがありました。
同じ真っ平らな状態から150ヤードのピンに対して、ストレートボールとドローボール、フェイドボールそれにプラスして、高いドロー高いフェイド全部打てないとそれが必要なときにすぐに引き出しから出して、打てるっていう技術がないと、勝てないんじゃないかなっと思いますね。

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皆様も次回石川選手が国内大会に参加した時は是非飛行線後方からのアングルで石川選手を観察して見てください。
どんな意図を持ってショットをトライしているのかを細かく観察してください。
ボールを追うことも面白いですが、ショットを打った後の石川選手の表情や仕草で打感はどうだったのか? また違った見方ができて観戦する楽しみが増すと思います。

 
 

andywada-sss アンディー和田
 
1968年生まれ。
14歳で渡米、南カリフォルニアでゴルフを始めてアリゾナ大学に進学。
卒業後は1991年にプロ転向しアメリカ国内のミニツアーやカナダ・南米・豪州・アジアなど世界25ヶ国でプロの試合を経験。
青木功や中嶋常幸、大町昭義など米ツアーでのキャディーの経験もあり。
2000年からはゴルフチャンネルでトーナメント解説者に転職。
欧州ツアーやLPGAツアー、アメリカ2部ツアーなどどんなツアーにも詳しい解説アナリスト、コメンテーター。